株式会社ロッテ 日本

日本のチョコレート工場にもたらされた新たな息吹

日本のチョコレートメーカーであるロッテ(LOTTE)は、自社の製造ラインを刷新することを決定した際、新しい設備に投資するのではなく、大規模なレトロフィットを選択しました。この決断は、大幅なコスト削減をもたらしただけでなく、エネルギー使用量の削減や事業活動による環境負荷の低減にもつながり、今日の情勢においては大きなメリットとなりました。

埼玉県さいたま市にあるロッテ浦和工場内第7工場のフロアには数十メートルにわたって機械が配置され、工場内はチョコレートマスの甘い香りが立ち込めています。ロッテが主力とするブランドの「ガーナチョコレート」に使用される上質なチョコレートマスを作るために、原料をミクロン単位まで細かく粉砕するロールリファイナーがずらりと並んでいます。その横には、チョコレートの味や風味を最終調整するコンチングマシンや、チョコレートマスを均質化するミキサーなどが数多く並んでいます。
 

SFLF-1800V 型5本ロール機Finer™(左) と SZAP-1300型2本ロール機 PreFiner™ (右) 5本ロール機のレトロフィットは最も時間を要したパートでした。 SFLF-1800V 型5本ロール機Finer™(左) と SZAP-1300型2本ロール機 PreFiner™ (右) 5本ロール機のレトロフィットは最も時間を要したパートでした。 SFLF-1800V 型5本ロール機Finer™(左) と SZAP-1300型2本ロール機 PreFiner™ (右) 5本ロール機のレトロフィットは最も時間を要したパートでした。
ミキサーから排出された直後のチョコレートマスは非常に粒度の粗いものですが、この後の2本ロール機と5本ロール機の工程を経ることにより、粒度が細かく均一化されたチョコレートマスに変化します。 ミキサーから排出された直後のチョコレートマスは非常に粒度の粗いものですが、この後の2本ロール機と5本ロール機の工程を経ることにより、粒度が細かく均一化されたチョコレートマスに変化します。 ミキサーから排出された直後のチョコレートマスは非常に粒度の粗いものですが、この後の2本ロール機と5本ロール機の工程を経ることにより、粒度が細かく均一化されたチョコレートマスに変化します。

ロッテは日本で最も良く知られるチョコレートメーカーの一つです。日本のコンビニエンスストアやスーパーマーケットに行けば、必ずロッテのチョコレートやキャンディ、ビスケット、ガム、アイスクリームが並んでいます。パイの実やトッポ、コアラのマーチなどの同社の製品は、子供のおやつメニューに必ずと言っていいほど登場します。また、同社はグローバルに事業を展開しており、ポーランドに子会社ウェデル(Wedel)を保有しているほか、東南アジアではインドネシア、ベトナム、タイに生産拠点を構えています。
 

ロッテのチョコレートの美味しさを実現する核となるのが、信頼性の高いビューラー製の設備です。両社の関係は半世紀近く前にさかのぼります。第7工場の機械は約20年以上前に製造されたものにもかかわらず、最新のタッチパネル式制御装置と最新機器を備え、新型機と同等の見栄えとパフォーマンスを有します。これは、ロッテが今回のプロジェクトで実施した、ビューラーによる大規模なレトロフィットによるものです。

より高い効率を目指して

ロッテの歴史は、1948年に東京でチューインガムの製造・販売を開始したことにさかのぼります。以来、ロッテはチョコレートやキャンディ、アイス、ビスケットとオリジナリティ溢れる高品質な商品を投入することで事業を拡張し総合菓子メーカーの地位に昇り詰めました。さらにロッテは日本最大級の菓子メーカーとしての地位を維持するため、常に新しい製造技術や設備を取り入れ、効率化を図っています。2018年、主力事業であるチョコレート製造に欠かせない機械に旧型と新型が混在している状態を改修することを今後の健全な設備維持管理の課題とし、同社はすべての機械を1カ所に集中させ、旧型の機械はレトロフィットすることにしました。巨大で複雑な設備だけに、それは大きなチャレンジでした。

 

最終的なチョコレートの味と風味を構築するコンチェは最新型も導入され、既設の旧型機械もレトロフィットにより最新型と同等となりました。 最終的なチョコレートの味と風味を構築するコンチェは最新型も導入され、既設の旧型機械もレトロフィットにより最新型と同等となりました。 最終的なチョコレートの味と風味を構築するコンチェは最新型も導入され、既設の旧型機械もレトロフィットにより最新型と同等となりました。
コンチェ主要構成部 コンチェ主要構成部 コンチェ主要構成部

「菓子製造分野では、ロッテの製品品質の高さから、長い間ビューラーと連携してきました。定期的なメンテナンスを行っていれば、どれだけ機械を使っていようとも、製品の品質が変わることはありません」と、ロッテ浦和工場機械エンジニアリング部のマネージャーである岡田隆夫氏は言います。「今回のプロジェクトでは、ビューラーは新型と旧型の機械移設のプランニングや据え付けも担当し、私たちは2022年に機械の移設、集約とレトロフィットを終え、新工場プロジェクトの完了に至りました。」

 

岡田隆夫氏、株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部マネージャー 岡田隆夫氏、株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部マネージャー 岡田隆夫氏、株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部マネージャー
菓子製造分野では、ロッテの製品品質の高さから、長い間ビューラーと連携してきました。定期的なメンテナンスを行っていれば、どれだけ機械を使っていようとも、製品の品質が変わることはありません

岡田隆夫氏, 株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部マネージャー

大規模なレトロフィット

このレトロフィットは大規模なプロジェクトであり、ビューラーが単独のお客様向けに行ったものとしては世界最大級のものでした。数多くのロールリファイナー、コンチングマシンやミキサーなどの機械にレトロフィットが施されました。作業の一環として、より効率的な駆動装置が取り付けられたほか、最新のタッチパネル式制御装置や、機械オペレーターの安全を強力に守るために、如何なる危険な状況を排除する安全柵やセンサーなど最新で最大限の安全装置も導入されました。

 

「ビューラーは長年にわたって機械の安全機能を重視し強化してきました。そしてこのプロジェクトでは最重要事項の安全性に加え省エネと省コストをカバーできました」とロッテ浦和工場の機械エンジニアリング部アシスタントマネージャーである寺田和史氏は語ります。彼は、このレトロフィットにより、すべての機械を新規に購入する場合と比較して、約30億円(約2,000万スイスフラン)を節約できたと見積もっています。

 

ビューラーは長年にわたって機械の安全機能を重視し強化してきました。そしてこのプロジェクトでは最重要事項の安全性に加え省エネと省コストをカバーできました

寺田和史氏, 株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部アシスタントマネージャー

寺田和史氏、株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部アシスタントマネージャー 寺田和史氏、株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部アシスタントマネージャー 寺田和史氏、株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部アシスタントマネージャー

事業と環境に対するメリット

レトロフィットのメリットは、特にこのインフレ率上昇の時代には明らかです。お客様が負担する設備導入コストは、新しい設備のケースと比較して大幅に低くなります。ビューラーの機械の寿命は非常に長く、耐用年数は最大で30~50年です。ただし、機械の制御システムや電装品は10年から15年ごとに更新する必要があります。また、より優れた駆動装置を導入することで、20~30%の省エネを実現することができます。これは、日本のように平均的な電気料金が過去数年で50%増、そして今後更に約30%の値上げを予定している国では大きなメリットとなります。ロッテ浦和工場のような大規模生産工場の場合、すでに約70万ユーロに上っている月々の電気代が、この値上げにより約23万5,000ユーロ上乗せされることになるからです。
 

電力使用量削減に対する取り組みは工場の様々な部分に施されています。機械フロアの一角には、現在の電力使用量が表示される大型ディスプレイが設置されています。電力会社と契約した最大電力を超過すると、以降の電気料金が大きく上がる為、それを防止するための対策が取られています。

寺田和史氏、株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部アシスタントマネージャー 鎌倉昌信、ビューラー株式会社 カスタマーサービス部副部長 寺田和史氏、株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部アシスタントマネージャー 鎌倉昌信、ビューラー株式会社 カスタマーサービス部副部長 寺田和史氏、株式会社ロッテ浦和工場 機械エンジニアリング部アシスタントマネージャー 鎌倉昌信、ビューラー株式会社 カスタマーサービス部副部長

このプロジェクトでの省エネ活動を通じて、ロッテの持続可能な事業への取り組みも強化されました。新設された第7工場には建物自体にも省エネの取り組みが施されました。新工場内の天井が高いフロアでは人々が作業する居住域に集中して温度成層を形成する置換空調システムを導入し、電力使用量を削減しました。最も重要な原材料のひとつであるカカオ豆を持続可能な供給源からのみ調達しています。これらはすべて、事業が環境に与える影響に対する高い意識と、可能な限り環境負荷を削減し、より持続可能な代替手段に移行する取り組みの一部なのです。

ロッテが使用するカカオ豆は持続可能な供給源からのみ調達されています。 ロッテが使用するカカオ豆は持続可能な供給源からのみ調達されています。 ロッテが使用するカカオ豆は持続可能な供給源からのみ調達されています。

「菓子の製造には、大量の冷却装置を稼働する必要があります」と岡田氏は言います。「私たちは、温室効果ガス排出に寄与しない環境にやさしい冷媒を使用した最新型の冷凍機を、チョコレート成型ラインのクーリングトンネルやアイスクリーム製造設備に導入しました。自然冷媒である二酸化炭素を使ってアイスクリームを冷却するこの設備は世界初のもので、ここ浦和工場に導入されました」

設備を最大限に活用

レトロフィットには他にも多くのメリットがあります。「レトロフィットは、機械の寿命を延ばすのに非常に有効です。省エネに貢献するだけでなく、機械の安定稼働により処分せざるを得ない規格外品の発生が減るので、食品ロスの削減にもつながります」と、ビューラー株式会社のカスタマーサービスマネージャーである矢代浩一は言います。彼はロッテのレトロフィットプロジェクトに当初から携わっていました。

 

レトロフィットプロジェクトでは、旧型の機械がアップグレードされ、本質的には新しい機械になります。矢代によると、品質の向上とエネルギーの節約に加えて、生産上のトラブルの減少、安全性の強化、予備部品の利用可能性の向上、そして設備保全管理者の安心感などのメリットがあります。

また、レトロフィットによって、旧型の設備をデジタル化に対応できるレベルに引き上げることができ、それが現在と将来のメリットにつながると彼は付け加えます。ロッテにとっては、これは数世代の機械を同じレベルに統一されていること意味しており、設備保全の管理や機械を操作するオペレーターにとっても役立ちます。

 

「ビューラーでは、新しい機械を販売するだけでなく、お客様所有するが既存の機械を長期に渡って最高のパフォーマンスで活用できるようサポートします」(矢代)

矢代浩一、ビューラー株式会社 カスタマーサービス部部長 矢代浩一、ビューラー株式会社 カスタマーサービス部部長 矢代浩一、ビューラー株式会社 カスタマーサービス部部長
ビューラーでは、新しい機械を販売するだけでなく、お客様所有するが既存の機械を長期に渡って最高のパフォーマンスで活用できるようサポートします

矢代浩一, ビューラー株式会社 カスタマーサービス部部長

世界的な課題を克服する現地のソリューション

ロッテ浦和工場内の機械制御盤。主に半導体の不足により制御機器の調達が厳しい状況でしたが、レトロフィットプロジェクトは予定通りの工期で終えることが出来ました。 ロッテ浦和工場内の機械制御盤。主に半導体の不足により制御機器の調達が厳しい状況でしたが、レトロフィットプロジェクトは予定通りの工期で終えることが出来ました。 ロッテ浦和工場内の機械制御盤。主に半導体の不足により制御機器の調達が厳しい状況でしたが、レトロフィットプロジェクトは予定通りの工期で終えることが出来ました。

今回のプロジェクトは、ビューラーがこれまでに実施した中でも最大規模のレトロフィットであるだけでなく、世界的に起きている深刻なサプライチェーンの逼迫を背景として達成されたものでした。

矢代が工場フロアの一角にある扉を開け指差しました。そこには機械を動かすロジックコントローラー(PLC)が収められた多くの制御盤が整列されていました。ここ数年、半導体をはじめとする部品の調達が困難になっているため、このレトロフィットに欠かせない重要な中核部品の調達は最も困難な作業でした。コロナウイルスの世界的流行とウクライナ紛争は、世界的な半導体チップ不足を引き起こし、他の供給ラインや海外渡航にも大きな影響を与えました。欧州のビューラーの技術者は、入国制限によりロッテのプロジェクトのために日本へ渡航することができませんでした。このような困難にもかかわらず、ビューラーは部品を調達し、空輸し、日本人の従業員のみで改造と設置作業を行い、2022年9月までに予定通り作業を終えることができました。ビューラージャパンとスイス本社そしてロッテとの密な連携と協力はこの困難を克服できた最大の要因でした。

これは矢代の大きな誇りとなりましたが、それ以上に、ロッテにとって重要な成功実績となりました。チョコレート生産の繁忙期は秋口から始まります。もし、レトロフィットが予定通りに完了していなければ、翌年の春まで延期せざるを得ず、生産計画に大きな障害となっていました。

「ビューラーはレトロフィットで新旧の機械を統合し、コンチングの遠隔制御などの機能を追加しました」と、寺田氏はプロジェクトを総括します。「これは、業務効率の向上を可能にする大きなメリットとなりました」
 

ロッテの主力製品の一つであるガーナチョコレートはビューラー製の成型プラントにより成型されています。 ロッテの主力製品の一つであるガーナチョコレートはビューラー製の成型プラントにより成型されています。 ロッテの主力製品の一つであるガーナチョコレートはビューラー製の成型プラントにより成型されています。
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